一言で!
折れ線と棒、2つのグラフが合体した、高機能ツール。
他には?
しかし、最初のうちはよく分からんと言われがちだし、時々使い方忘れる。アボカドサーモン寿司。
描いただけでは、困りごとは1つも減らない。ただし、どれが一番強いかは一目で分かる。
パレート図とは?
英語ではPareto chart。
困りごとを、多い順に棒で並べる。上から足し上げた割合(累積)を、折れ線で重ねる。
この例では、上の2つで全体の75%。下の3つを全部片づけても、残りの25%しか減らない。
じゃあ、文字ずれと入力漏れからやるか、などと、どこから手をつけるかが、一目で決まる。
パレートの法則(80対20の法則)
上位2割の項目が、全体の8割を占める。この経験則を、パレートの法則(80対20の法則)と呼ぶ。
いつもぴったり2割と8割になるわけではない。大体8割で偏りがある、という目安だ。
パレート図では、折れ線が80%に届くあたりまでが、先に手をつける候補になる。
並べる物差しを決める
ただし、並べる物差しを間違えると、グラフそのものが嘘をつく。
筆者も、これで失敗した。
不具合を、影響の大きいものから潰さず、一覧の上から総当たりで直していった。件数は確かに減った。それでも、影響の強い不具合が最後まで残った。
同じ不具合を、件数ではなく「仕事が止まった時間」で並べ直すと、こうなる。
件数では最下位だった「集計停止」が、1位に上がる。2件しかないが、当たると月末の仕事がまるごと止まるからだ。
この事例で先に選ぶべきだったのは、集計停止だ。2件を直すだけで、止まった時間の半分以上(56%)が消える。続けて桁あふれまで直せば76%。件数で1位だった文字ずれは、全部直しても4時間しか減らない。
何を数えるかは、人が決める。
- 件数:起きた回数。数えやすいが、軽いものが上に来やすい。
- 影響:止まった時間、手戻りの手間、お金。数えにくいが、本当に痛いものが上に来る。
パレート図でいちばん大事な仕事は、グラフを描くことではなく、並べる物差しを決めることだ。
ABC分析にも使える
同じ並べ方は、在庫や商品の管理にも使われる。これをABC分析と呼ぶ。
商品を売上の大きい順に並べ、累積の割合でA・B・Cの3つに分ける。
- A:売上の大半を占める少数の商品。切らさないよう、手厚く管理する。
- B:その中間。
- C:数は多いが、売上は小さい商品。管理の手間をかけすぎない。
この例では、10個のうち上位3個で売上の67%を占める。この3個がAになる。
どこで区切るかは、会社や商品ごとに決める。
QC七つ道具の中での役どころ
パレート図は、QC活動で使う「QC七つ道具」の一つ。
チェックシートで数え、パレート図で一番強い困りごとを決め、特性要因図でそれがなぜ生まれたかを掘る。この順でつながっている。
職場で実際に困りごとを見つけて絞り込む手順は、業務改善の始め方①(ma-dailywork)で紹介している。
豆知識
- ヴィルフレド・パレート: イタリアの経済学者(1848〜1923)。スイスのローザンヌ大学で教えた。
- ジョセフ・M・ジュラン: アメリカの品質管理の専門家。『品質管理ハンドブック』の編者。
- 重要な少数と有用な多数: ジュランの言葉。最初は「重要な少数と取るに足らない多数」と呼んだが、のちに「有用な多数」へ言い換えた。
歴史
はじまり
始まりは、品質ではなくお金の話だった。1897年、パレートは各国の所得の統計を調べ、所得が一部の人に大きく偏っていることを数式で表した(パレート『経済学講義』第2巻、1897年(archive.org))。
1905年には、アメリカの統計学者ローレンツが、富の偏りを足し上げの曲線で描く方法を発表する。パレート図の折れ線の祖先は、こちらにあたる(Lorenz, Methods of Measuring the Concentration of Wealth, 1905(JSTOR))。
名前の付け間違い
品質の世界へ持ち込んだのは、アメリカの品質管理の専門家ジュランだ。1920年代、若い技術者だったジュランは、不良を多い順に並べると、少数の種類が不良の大半を占めることに気づいていた。1951年の『品質管理ハンドブック』で、この偏りを足し上げの曲線で示し、パレートの名前を付けた。
ところが1974年、ジュラン本人が「名前を付け間違えた」と書いている。パレートが調べたのは富の偏りだけで、どの分野にも当てはまる原則として唱えたのはジュラン自身だった。曲線も、本来はローレンツの名前で呼ぶべきだったという(Juran, The Non-Pareto Principle; Mea Culpa, 1974(Juran Institute))。
それでも、名前はそのまま残った。
日本へ
1954年、ジュランは日本に招かれ、経営者と管理者に向けて品質管理を教えた(年譜 日本のTQCと歩みをともにした石川先生(日本科学技術連盟))。パレート図は、のちに日本の職場でQC七つ道具の一つに数えられていく。
いま
いまは、Excelのグラフの種類に「パレート図」がそのまま入っている。数えたデータを選べば、並べ替えも累積の折れ線も自動で描ける(Microsoft サポート「パレート図を作成する」)。
描く手間は、ほぼなくなった。残っているのは、何を数えるかを決める仕事だけだ。
まとめ・私見
大体、見える数(個数/件数/金額など)でグラフを作ることになる。
大変便利。
けど、なんでか時々存在を忘れる。
使い方も簡単に忘れる。
あれ、この折れ線って、なんであったんだっけ??
年表
| 年代・年 | 主な出来事 | 主な人物・組織 | 主な国・地域 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 1897年 | パレートが所得の偏りを数式で表す | ヴィルフレド・パレート | スイス(ローザンヌ) | 『経済学講義』第2巻の「所得の曲線」の章で、各国の所得統計から、所得が一部に偏る形を数式にした。対象はお金の分布だけだった。[パレート『経済学講義』第2巻(archive.org)](https://archive.org/details/fp-0148-2) |
| 1905年 | ローレンツが富の偏りを足し上げの曲線で描く | マックス・O・ローレンツ | アメリカ | 下から順に足し上げた割合を曲線にして、偏りの大きさを一目で比べられるようにした。パレート図の折れ線の祖先。[Lorenz, 1905(JSTOR)](https://www.jstor.org/stable/2276207) |
| 1920年代 | ジュランが不良の偏りに気づく | ジョセフ・M・ジュラン | アメリカ | 若い技術者として、不良を多い順に並べると少数の種類が大半を占めることを見ていた。[Juran, The Non-Pareto Principle; Mea Culpa(Juran Institute)](https://www.juran.com/wp-content/uploads/2021/03/The-Non-Pareto-Principle-1974.pdf) |
| 1951年 | 『品質管理ハンドブック』でパレートの名前が付く | ジョセフ・M・ジュラン | アメリカ | 品質の損失の偏りを足し上げの曲線で示し、「パレートの原則」と名付けた。[Juran, 1974(Juran Institute)](https://www.juran.com/wp-content/uploads/2021/03/The-Non-Pareto-Principle-1974.pdf) |
| 1954年 | 「重要な少数と取るに足らない多数」が論文に載る | ジョセフ・M・ジュラン | アメリカ | Management Review誌の論文で、この言い回しが初めて活字になったとジュランは書いている。[Juran, 1974(Juran Institute)](https://www.juran.com/wp-content/uploads/2021/03/The-Non-Pareto-Principle-1974.pdf) |
| 1954年 | ジュランが来日し、品質管理を教える | ジョセフ・M・ジュラン | 日本 | 来日し、経営者・管理者向けの講座を開いた。[年譜 日本のTQCと歩みをともにした石川先生](https://www.juse.jp/ishikawa/ningen/Chronology_20150519.pdf) |
| 1974年 | ジュランが「名前の付け間違い」を認める | ジョセフ・M・ジュラン | アメリカ | パレートは富の偏りしか調べておらず、どの分野にも当てはまる原則としたのは自分だった、曲線もローレンツの名で呼ぶべきだった、と書いた。[Juran, The Non-Pareto Principle; Mea Culpa](https://www.juran.com/wp-content/uploads/2021/03/The-Non-Pareto-Principle-1974.pdf) |
| 現在 | Excelにパレート図が標準で入っている | Microsoft | — | グラフの種類から選ぶだけで、並べ替えと累積の折れ線を自動で描ける。[Microsoft サポート「パレート図を作成する」](https://support.microsoft.com/ja-jp/excel/create-a-pareto-chart) |