一言で!
NPUとは、AIの推論に特化させた最終兵器。
他には?
自分では何も考えないし、決めない。ただし、任された一つの計算だけは桁違いに省電力でこなす。
NPUとは?
正式名称はNeural Processing Unit。AIの推論だけを引き受けるために作られた専用回路だ。
ここでいう推論は、
- ❌️考えて推理することではない。
- ⭕️学習ずみのAIに答えを出させる作業
兵器が自分では何も考えないのと同じで、NPUも判断はしない。
CPUの命令に従っているだけ。
推論でやっているのは「掛ける、足す、次へ渡す」の繰り返しだけ。
一種類しかないなら、それ専用の回路を大量に並べてしまえばいいというコンセプト。
⇒
途中の値をメモリへ何度も取りに戻らないので、効率がよく、電力を食わない。
NPUにできるのは推論だけで、学習には使えない。代わりに、電池で回り続ける。AIを使うだけならNPUで足りるが、AIを作るにはGPUが要る。ここが両者のいちばん大きな違いだ。
では、いま使っているPCにNPUがないと困るのか。困らない。
ChatGPTを思い浮かべてみてほしい。
あれはネットにつながっていて、さらにその先にはクラウドサーバーにつながっている。
質問を打ち込むと、その文字は回線を通って向こうのサーバーへ飛ぶ。答えを作っているのは向こう側のサーバーに並んだGPU。
つまり、手元のPCがやっているのは、送ることと、画面に表示することだけ。
いまのAIサービスの多くはこの形なので、NPUがあってもなくても速さは変わらない。
なので、NPU目当ての買い替えはいまのとこ、要らない。
NPUが効いてくるのは、この計算を手元でやるようになったときになる。
それでも新しくPCを買うなら、見るところは2つだけだ。
- NPUが載っているか。カタログでは「AIエンジン」「Neural Engine」など別の呼び名で書かれていることもある。
- TOPSの数字。1秒あたり何兆回の演算ができるかを表す値で、MicrosoftがCopilot+ PCに求めた40 TOPSがひとつの目安(Introducing Copilot+ PCs)。
豆知識
- TOPS: Tera Operations Per Secondの略。1秒あたり何兆回の演算ができるかを示す、NPUのカタログ値。
- INT8: 数値を8ビットの整数に丸めて計算する方式。精度をわずかに落とす代わりに、速度と電力で得をする(Quantization and Training of Neural Networks for Efficient Integer-Arithmetic-Only Inference)。
- シストリックアレイ: 計算器を格子状に並べ、データを隣へ手渡ししながら計算させる回路の作り。TPUが採用した方式。
- Neural Engine: AppleがNPUに付けている呼び名。メーカーごとに呼び方が違うだけで、役割は同じ。
- Copilot+ PC: MicrosoftがAI機能付きPCに定めた条件。40 TOPS以上のNPUを備えることを求める。
歴史
2010年代、写真の分類や音声認識が実用になると、最初に悲鳴を上げたのはデータセンターの電力だった。利用者が増えるほど推論の回数が増え、汎用の部品では処理も電気代も追いつかない。Googleはそこで推論だけを実行する専用チップTPUを作り、2015年から自社のデータセンターで動かし始める(In-Datacenter Performance Analysis of a Tensor Processing Unit)。専用の兵器に振り切るとどこまで効率が上がるのかを、実測で示した事例になった。
同じ問題が、次はスマートフォンで起きる。写真の加工や顔の認識をいちいちサーバーへ送れば、通信が要るうえに遅い。手元で計算すれば済むが、今度は電池が持たない。2017年、AppleはA11 Bionicにneural engineという専用回路を積み、この処理を電池で動く端末の中へ引き込んだ(Apple Newsroom「The future is here: iPhone X」)。
決定打はPCだった。2024年、MicrosoftはCopilot+ PCの条件として40 TOPS以上のNPUを要求する(Introducing Copilot+ PCs)。OSの機能そのものがNPUを前提にしたことで、NPUは「あると速い付加物」から、CPU・GPUと並ぶ標準部品へ移り始めた。困っていたのは三度とも同じ、電力だ。
まとめ・私見
これからAIは、ローカルで動作するほうが主流になったり、機密情報を扱えるパートナー的な立ち位置になってくると予想している。
メリットは、
- 通信が要らない
- 外に出したくないものを扱える
- 返事が速い
その流れに合わせて、NPUは載っているのが当たり前の部品になっていくはず。CPUやメモリと同じで、そのうち誰も気にしなくなる。
だから今あわてて買う必要はない。次の買い替えのときには、たぶん勝手に載ってる。
年表
| 年代・年 | 主な出来事 | 主な人物・組織 | 主な国・地域 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 2015年 | 推論専用チップTPUが、Googleのデータセンターで動き始める | アメリカ | 写真の分類や音声認識の利用が増え、汎用の部品では処理も電気代も追いつかなくなった。推論だけに回路を振り切るとどこまで効率が上がるかを、実際の運用で示した。[TPUの論文(arXiv)](https://arxiv.org/abs/1704.04760) | |
| 2017年 | iPhone XのA11 Bionicに「Neural Engine」が載る | Apple | アメリカ | 顔の認識などをサーバーへ送らず、電池で動く端末の中で計算するための専用回路。NPUがデータセンターから手元の端末へ降りてきた。[Apple Newsroom](https://www.apple.com/newsroom/2017/09/the-future-is-here-iphone-x/) |
| 2024年 | Copilot+ PCが、40 TOPS以上のNPUを条件にする | Microsoft | アメリカ | OSの機能そのものがNPUを前提にした。NPUが「あると速い付加物」から、CPU・GPUと並ぶ標準部品へ移り始めた。[Introducing Copilot+ PCs](https://blogs.microsoft.com/blog/2024/05/20/introducing-copilot-pcs/) |